ある時、里山に住む一羽の小鳥が自分の縄張りを離れ、奥山へと冒険に出た。

見た事もない大きな木のたくさん茂る森を越え
山の渓谷の上空をどんどん遡って飛んで行った。
 
しかし、不注意から帰り道の目標を失って、途方に暮れていた。
日は傾き、帰り道は遠く感じるばかり、
おまけにお腹も空いて元気がなくなっていく。
 
焦って飛び回っていると、
奥山の鳥や獣たちが手招きして、

「君の帰る森はここからは随分と遠いので、今夜は無理をせずここに泊まって行きなさい。」
と親切に自分らの「ねぐら」へと連れて行った。
 
「さあ、君の好物の木の実を、腹一杯食べなさい。谷川で汲んだおいしいお水もあるよ。」
といって御馳走をし、寂しくないようにと、皆で一緒に夜を明かした。
 
 翌日、小鳥は無事に自分の里山へと帰り着く事が出来、彼らから受けた親切がとても嬉しくて、いつか皆をこちらへ招待したいものだ、と思いながら心の中で感謝していた。
 
 やがて、彼らを招待するに足りるほどの食糧の蓄えもできて、
早速食事に誘いたいと思って奥山へと飛んでいった。
 
しかし小鳥の目に入ったのは、
ちょうど山火事がすぐ彼らの森へと迫っていて、逃げまどっている姿であった。
 
小鳥は全力で谷川に飛び込み、全身を水で濡らし、森の上に飛び、羽ばたいては水の滴を落としたが、わずか二、三滴にしかならなかった。
 
 その様子を見て、やじうまの鳥たちが
「小鳥君、君の二、三滴の水であの山火事を消せると思うのかい、無駄な努力はやめろ。」
とあざけり笑った。
 
しかし、小鳥は
「あの火事の中には、自分に親切にしてくれた大切な友達がいて、苦しんでいるのです。」
「私には今できる事を全力でやることしか、彼らの親切に報いる事はないのです。」
そう答えると、また谷川に飛び込み、火事場へと急いで飛んでいった。
やがて、空が黒くなるほどの、おびただしい数の鳥たちが川から消火の為に飛ぶ姿がそこにあった。
 
小鳥の話を聞いて感動し、共に消火活動にあたったのは奥山の周りにいる鳥たちであった。空が真っ黒になったというのだから、何千、何万の鳥が集まったのであろう。
 
そして空の上の風神、雷神はこの様子をみて心を動かされ
八大竜王を呼び出し、一昼夜の間、土砂降りの雨が降り続いた。
 
鳥たちが心をふるわせたのは、共に生きて共に栄える共存共栄の心、一粒の雨がまとまって大きな川の流れとなる。自分もその一滴に成ろうという、心の表れである。
せっかくこの世界に居合わせたのです。
そうです。私たちも幸せの一摘の水になろうではありませんか。